全身麻酔の流れ

ここではおおまかに全身麻酔の全体の流れをお話しします.

1.手術数日前

 麻酔を受けるための,呼吸・循環・血液検査を主治医が行います.他の病気をお持ちの方は,別途に専門医の診察および検査を受けて頂くこともあります.

2.手術前日まで

 担当麻酔科医である私が術前回診を行い,麻酔方法についての御説明・診察を行います.また手術室看護スタッフが術前訪問を行い,詳細な項目について確認を行い,看護計画を立てます.

 悪心・嘔吐および肺炎を防ぎ,安全に麻酔を受けるためには空腹の状態が必要です.夕食後,服薬に必要な水以外は絶飲食となります.但し,小さなお子さんの場合には別途に御説明致します.

 なお夜には以下の飲み薬を処方します.

   抗不安薬・睡眠薬  :不安無く入眠・熟睡できます.

 薬を飲めない方には点滴を処方します

   催眠鎮静剤・抗不安剤:不安無く入眠・熟睡できます.

3.手術当日

 朝に以下の飲み薬を処方します.

   抗不安薬・睡眠薬  :不安無く手術を待つことが出来ます.

 手術が午後になる方にはもう1度上記の飲み薬を処方します.

 薬を飲めない方には点滴を処方します.

   催眠鎮静剤・抗不安剤:不安無く手術を待つことが出来ます.

 このため患者さんはリラックスして手術室に向かうことが出来ます.また,絶飲食による脱水状態を防ぐために朝から点滴を行います.ただし,小さなお子さんの場合には手術室で麻酔で眠った後に点滴を行う場合もあります.

4.手術室

 手術室で手術用ベッドに横になった後,血圧・心電図測定を行います.また血液中の酸素の量を測定するために,指先に小さな器械をつけます.おなかの手術などで硬膜外鎮痛法を行う予定の患者さんは,麻酔で眠る前に硬膜外麻酔用カテーテル(管)の挿入を行います(詳細は後述).

 全ての準備が整った後,点滴の途中から麻酔薬が入り,全身麻酔が開始されます.以後手術が終わり,麻酔から覚醒するまで意識はなく,したがって痛みを感じることも一切ありません.

 全身麻酔法では,多くの場合手術のために,全身の筋肉を一時的に麻痺させる必要があります.ただし同時に呼吸をも止めてしまいます.そこで手術中だけ人工呼吸を行うため,麻酔で眠った直後に気管挿管やラリンジアルマスクの挿入を行います.気管挿管は口から気管に小指の太さほどの細いチューブを入れます.ラリンジアルマスクには小さなマスクにチューブがついています.このチューブから肺へ酸素,または酸素と麻酔薬を投与しますので,手術中の呼吸の心配はありません.麻酔から目覚めた直後はこのチューブがまだ入っていて声を出すことは出来ませんが,患者さんが充分呼吸できるようになればすぐ抜きますので,声もきちんと出るようになります.

5.全身麻酔後病棟回診

 手術を終えて病棟に戻られた患者さんには,創の痛みの程度,痰の出方,喉の痛み,頭痛,吐き気,睡眠の状況などを伺いに,随時回診に伺います.

 また,原則として睡眠剤の点滴を用い,翌朝までの安眠を得られるようにしています.

6.まとめ

 私の「理想」とするところは,手術室への往復も知らず,背中や腰の針の痛みも知らず,術後の痛みや嘔気もほとんど経験せずに,いつの間にか翌朝を迎えられることです.患者さんの朝のニッコリが楽しみなのです.

 以上,大まかな説明ですが,何度聞いても,不安や心配は消せません.遠慮せずに疑問を教えて下さい.

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いわき麻酔と痛みのクリニック

当ウェブページへようこそ! ここでは,麻酔科医である私が行う「全身麻酔法」と ささやかに行っている「痛み外来」についてご説明します.ゆっくりご覧下さい.

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