硬膜外鎮痛法

ここでは,硬膜外鎮痛法(こうまくがいちんつうほう)の説明をしたいと思います.

 硬膜外麻酔法は局所麻酔法の一つです.脊髄のすぐ近くまで針あるいは細い管(カテーテル)を通し,局所麻酔薬を注入し麻酔を行います.これを手術数日後まで利用し,創痛対策する方法を硬膜外鎮痛法といいます.

 ひだりの図は体を左側から見た図になります.そのため図の右側には脊椎が描かれています.脊椎は体重や姿勢を支えるだけではなく,脊髄を強固に守っています.いわば脊髄の鎧(よろい)ですね.脊髄はさらに脊髄髄膜(内側はクモ膜,外側は硬膜)に包まれ,脳脊髄液に浮かんでいます.脊髄は水のクッションにも包まれているのですね.

この脊髄髄膜のすぐ周囲は「硬膜外腔(こうまくがいくう)」と呼ばれています.「腔」ですから,そこはスカスカで,薬剤だけでなく細い管(カテーテル)を入れることも出来るのです. 脊髄は手足や体の一部に感じた痛み・温度・質感・関節の位置などを,電気信号にして大脳に伝える役目を持っています. ここに局所麻酔薬を入れるとどうなるかと言えば,脊髄の一部に効くことで,痛みの大脳への伝達を遮断することが出来るのです.その結果,創はあるのに痛くはないという状況を作れるのです.

 ただ,これを闇雲に使うと鎮痛を通り越してしびれとなったり,手足では脱力となったりして,それはそれで不快です.適度に鎮痛しようとすると動いた時だけは痛いという状況にはなります.要はバランスですね.でも私がお腹を開ける手術を受ける場合には,絶対にして貰いたい治療です.

 ついでですが,この注射自体は結構痛くて不評です.中には断る患者さんさえもいます.なので私はその間,少しだけ意識を取る薬剤を使い,いつ背中に注射を受けたのかは判らないようにしています.どうぞご安心下さい.


身体をひだり側からみています.脊椎の骨の中を進む,白いカテーテルが分かると思います.

いわき麻酔と痛みのクリニック

当ウェブページへようこそ! ここでは,麻酔科医である私が行う「全身麻酔法」と ささやかに行っている「痛み外来」についてご説明します.ゆっくりご覧下さい.

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