これを今お読みになっているあなたは,残念ながら手術を受けられることとなった方,あるいはその関係者の方と思います.手術原因の軽重,規模の違いこそあれ,相応の緊張,心配,恐怖あるいは不安を抱えることとなったでしょう.
手術に麻酔はつきものですが,特に全身麻酔法は単に患者を眠らせるだけでも,痛みを取るだけでもありません.全身麻酔法の唯一の目的は,危険性を伴う手術から,患者の方々の「体」と「心」を守ることなのです.
ここでは麻酔を次の三つの段階に分けます.
第一段階 ; 手術直前まで
手術前までに,麻酔の詳細について関係者も含めて丁寧に説明します.
あらかじめ予想される危険性に対して,対策をたてるための診察を行います.
緊張や不安をやわらげる薬剤を処方します.
第二段階 ; 手術中
生命を守るために,適切な麻酔薬,各種モニターなどを使用し,心臓,呼吸,脳波,その他の様々な生体情報を,手術が終わるまで監視し続けます.
執刀医たちと連携し,予想される合併症・偶発症への対策を行います.
看護師・技師たちと連携し,手術患者の安楽性追求・羞恥心およびプライバシー保護を行います.
また,適切な検査を必要に応じ行います.
第三段階 ; 手術後
傷の痛みはもちろんのこと,その他の苦痛も可能な限り取り去ります.
夜間は安眠を得られるよう,適切な薬剤を使用します.
以上のことは,わたしが平成元年に麻酔科医を志した頃から,年々培ってきたものです.日本麻酔科学会認定麻酔専門医として,知識を血とし,経験を肉とし,安心して安全な麻酔を受けて頂けるよう,鋭意努力しています.
手術を受けられる方々の1日も早い回復を心から願っています.
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2016.03.01 09:57
2016.03.01 09:44